
築年数が経過したマンションにありがちな、歩くと少しフワフワする床。そして、光が届きにくく、どこか暗い印象を与えてしまう細切れの間取り。「価格は魅力的だけれど、このまま住むのは…」と、理想の暮らしを諦めてしまうのは、まだ早いかもしれません。リノベーションすることで、床の不快感を解消し、暗い印象だった空間を、無垢材の温もりあふれる開放的な住まいへと生まれ変わらせられます。
今回は、不動産購入からリフォームまでをワンストップでお手伝いいたしました、姫路市神子岡前・築29年のマンションリノベーション事例をご紹介します。
ご依頼の背景と施主のご要望
今回リフォームをご依頼いただいたのは、姫路市神子岡前の築28年のマンションを購入されたご家族。弊社の不動産事業部「ハウスドゥ中地南」で仲介し、その後ワンストップの流れで購入後のリフォームへ着手していきました。
物件は築年数の割にはきれいでした。ただ、和室のある昔ながらの間取りで部屋が小分けにされており、全体的に狭く暗い印象がありました。
明るくて開放的な空間を好む施主の好みとはかけ離れていたことや、将来車椅子になった時に対応しやすいような広さも求めていたため、間取りを変えるリノベーションをされることにしました。また、マンション特有の床のフワフワ感を無くしたいという要望もございました。
姫路市神子岡前の築28年のマンションを購入され、入居前のリフォームをご依頼いただきました。物件は状態が良かったものの、マンション特有の床のフワフワ感、部屋全体が暗い、間取りを変えたいなどの要望がございました。
- 床:マンション特有のフワフワ感(LL-45)
- 玄関ホール: 狭さと暗さがあり閉鎖的な印象。
- LDK+和室:一昔前のマンションに多い間取り。LDKに隣接して和室が併設。
- 全体的な間取り:「3LDK+和室」(4LDK)で小分けにされた部屋が狭さを作り出している。
- トイレや洗面室:トイレや洗面室の出入口が狭い。
これらの課題を解決し、「デザインも機能も妥協しない、自分たちらしい住まいへ」との想いから、水回り、内装、窓、ガレージシャッターを含む、住まい全体のトータルリフォームがスタートしました。
- 床のフワフワ感を解消し、無垢材の温もりあふれる快適な足元へ
- マンション特有のフワフワした防音フローリングを全て撤去。遮音性能を満たす防音マットを下地に敷き、その上に肌触りの良い無垢材メープルを張ることで、フワフワ感のない快適な歩行感を実現しました。淡い色調の床材が、空間全体を明るく上質な印象に仕上げています。
- 壁を取り払い、光と風が通る広々とした開放的な住まいへ
- 玄関両脇の壁やLDKと和室を隔てていた壁などを取り払い、細かく仕切られた間取りを広々とした空間へと刷新しました。玄関から光が差し込む明るいホールが生まれ、LDKは和室を取り込むことで開放感が格段にアップ。どこにいても家族の気配を感じられる住まいが完成しました。
- 将来を見据えた、広さと使いやすさを両立した水まわり
- トイレと洗面室は、壁や収納を整理してスペースを拡張。出入口は開口の広い引き戸に変更し、将来車椅子を使用する場合でもスムーズな出入りが可能になりました。明るいフロアタイルと清掃性の高い壁パネルで、清潔感とメンテナンス性を向上させた快適な空間です。
物件概要
物件種別 | マンション |
住所 | 兵庫県姫路市神子岡前 |
竣工年月 | 1997年(リノベーション当時 築28年) |
構造 | SRC(鉄骨鉄筋コンクリート) |
工事箇所 | 玄関ホール、洋室、洗面室、トイレ、和室、廊下 |
リフォーム内容
- 間取りの変更(玄関ホール隣の壁撤去、洋室の収納撤去、和室の洋室化)
- 内装工事(床材の張替え、壁紙・天井クロス張り替えなど)
- 照明やコンセント・スイッチの新設や交換
【床】マンション特有のフワフワ感を解決!無垢の床材で快適な空間に。
悩み:マンション特有の防音フローリングによるフワフワ感がする床
管理がしっかりしているマンションでは、階下への配慮から床に一定の遮音性能が求められています。その基準を満たすには、主に2つの方法があります。
- 二重床にする
- 支持脚を立てて床を浮かせ、その上に下地材と仕上げ材を張る床システム
- 遮音性能LL-45(L45)以下の床材を使用する
- 裏面に遮音性能を満たすクッションが付いた床材
二重床は配管スペースの確保もできることからメンテナンス性にも優れ、2000年頃からは二重床を採用するマンションも増えてきており、いまや新築マンションでは標準的な仕様になっています。この方法の短所は、床の高さが上がる分、天井が高くないと空間が狭くなってしまうのと、初期コストが高いことも挙げられます。
一方、1990年代以前のマンションでは、まだまだLL-45(L45)の床材を直張りしているマンションが圧倒的に多いです。初期コストは抑えられますが、性能を満たすために裏面についてるクッションの影響でフワフワ感が生まれているのです。該当マンションの床も元々はこちらの仕様で仕上げらていました。

解決策: 全てを剥がし、防音マットを下地に設け、無垢の床材に張替え
今回のリフォームでは、「床のフワフワ感を一切無くす」というゴールのため、既存の床材は全て剥がし、遮音性能を満たすための防音マット(サイレント・トライマット)を下地に設け、合板を捨て貼りした上で、無垢の床材を張っていきました。


コンクリート上に張り付いている

コンクリートが現れました
コンクリートに直貼りされた元の床材を剥がすと、裏面の遮音クッションがコンクリートに張り付いています。もちろん、それらも全て剥がし撤去していきます。剥がした先には元のコンクリートが現れ、その上から防音マット(サイレント・トライマット)を施工していきます。


サイレント・トライマットとは、マンションなどの 集合住宅向けに開発された、厚さ22mmで防音性能「LL-45」を達成する一体型防音床下地材です。下地合板と防音材が一体化しており、床に敷き詰めるだけの簡単な施工で、無垢フローリングや合板フローリングなど様々な床材に対応できる点が特徴です。

これにより、マンションの管理規約で求められる遮音性能(LL45)を満たすことができ、フワフワ感のない床に仕上げることができます。
仕上げの床材には、「無垢材メープルのオスモ自然塗装」を選択しました。塗装は、ひまわり油を主成分としたドイツのオスモ社の自然塗料を使った塗装です。工場で塗装された無垢材を使用しましたのでムラなくキレイに仕上がっており、メープルの高級感を上手く引き出してくれています。


メープルは淡い色調と特徴的な杢目でフローリングだけではなく家具や装飾品などとして幅広く愛用されてきました。特に鳥眼杢があるものは、「バーズアイメープル」と呼ばれ、珍重されています。その他にも玉目「キルテッド」、虎杢「タイガー」、縮杢「フレイム」など特徴的で美しい杢目が光のあたり方で変化して、上質なシルクのように光沢があり高級感があります。その繊細な美しさからピアノやバイオリンなどの精巧な楽器用の材として重用されています。
また、重厚で衝撃に強い特徴を併せ持ち、耐磨耗性の強さからアメリカではプロバスケットボール(NBA)で使用されるコートのフロアやボーリングのレーン、ピンなどにも用いられています。
ユニタイプなので、木目や濃淡がモザイク柄のように細かく見ることができ、広さを感じるお部屋に仕上がります。

【玄関ホール】両脇の洋室の壁を取り払い、広々とした明るい空間に!
悩み:玄関から見ると暗くて狭い印象がある


元々の間取りは、玄関を開けると目の前に廊下が通り、玄関の両横にはそれぞれ洋室の壁があるため、昔ながらのよくある狭くて暗い感じなりやすい空間でした。また床材の色も暗めの色合いなので、それも影響しています。
解決策: 玄関両脇の洋室の壁を取り払い、広い玄関ホールにする
玄関の両脇には約5帖の洋室があったため、その壁を壊すことで空間を一体化しました。これにより玄関土間とホール合わせて2帖もなかった空間が、広々とした玄関ホールに変わりました。


両脇の洋室は窓がある部屋でしたので、その窓のおかげで陽の光が差し込み、照明をつけなくても明るい空間になっています。また、床材を明るい色であるメープルにしたことも、空間の明るさに影響しています。
【和室の洋室化】LDKと一体の空間にし、玄関ホールにも繋がる通路も設ける
Before:LDKに隣接した6帖の和室
LDKに隣接した6帖の和室は、マンションによく見受けられる間取りです。




リフォームをする際、「和室をどうするか?」は悩むところでもあります。大きく分けると以下の3通りです。(掛かるコストは1<2<3)
- 和室のそのまま活かす(畳や襖の張替えをする)
- 畳をフローリングに変える(襖は張替えをする)
- 和室を洋室化する
畳をフローリングにする場合、床の構造が異なるため、床材を張り替えるだけ済むということはありません。畳とフローリングの厚さが違う分、高さ調整をすることにコストが掛かってきます。
また和室の度合いによっても、洋室化する際のコストが変わります。壁が柱や梁が表しになっている真壁の場合、壁紙を貼るための下地材を設ける必要があるため、その分のコストが掛かってきます。
After:和室を洋室化し、LDKと一体の空間に!玄関ホールにも繋がる通路も設ける



今回の工事では、和室を洋室化しました。さらに、壁や扉なども取り払って、LDKと一体に空間にし、間取りを変えるリノベーションをしております。
加えて、和室の押し入れ・洋室の収納になっていた箇所の壁を取り払って、玄関ホールと行き来できる収納スペースを設けました。


【キッチン】囲う壁を撤去してオープンなキッチンに


キッチンとリビングの間には垂れ壁などがありました。元々はㄇの形で両端と上部に壁があったようですが、売主側で横の壁を一部撤去していたようです。
今回、施主の要望としては「オープンにしたい」とのことでしたので、キッチンを囲っていた壁を取り払い、インターフォンも指定の位置に移動しました。(工事のタイミングでマンション全体のインターフォン交換があり、新しいインターフォンに交換されました。)
【洗面室・トイレ】壁や収納を取り払い空間を広げ、建具も変え開口も広げる
Before:出入口も空間も狭いトイレと洗面室



トイレ・洗面化粧台どちらも設備自体は新しく、そのまま使える状態でした。ただ、トイレは通常の広さ(1帖)よりも少し狭い。洗面室は自由なスペースが1帖ほどでよくある洗面室のサイズでしたが、床材の色や収納があることで少し狭く暗い印象がありました。どちらも一人では十分な広さではありますが、例えば将来、介護などで二人分のスペースが必要なことを考えると狭いでしょう。
After:壁や収納を取り払い、床材も変えることで、広く明るく清潔感のある空間に



間取りを変える際、トイレ前の壁を移動させ、トイレスペースを少し広くいたしました。また腰壁にはアイカ工業のパネル「セラール」を貼り、掃除のしやすさを向上させました。
洗面室も、収納を取り払い2帖分の広さにすることができました。



トイレ・洗面室、どちらも床を明るめのフロアタイルに変えたため、清潔感のある印象になっています。
FPT2073 | フェイソールプルスは、東リ株式会社が製造する、普遍的なマーブル模様を持つロングライフタイルです。単層構造の塩ビ(ポリ塩化ビニル)製で、自然由来の炭酸カルシウムを主成分としており、多様なカラーバリエーションが展開されています。歩行頻度の高い業務用にも適しており、環境配慮型商品(リサイクル材使用)としてFloorScore認証も取得しています

セラールとは、アイカ工業株式会社が製造する、メラミン樹脂化粧層と特殊不燃コア層を高温・高圧でプレス成形した「メラミン不燃化粧板」の名称です。キッチンパネルや壁面材として広く採用されており、美しい見た目に加え、硬度、強度、耐熱性、耐久性に優れているのが特徴です。また、汚れが付きにくく、掃除が簡単で、抗菌機能を持つ製品もあり、住宅から医療・介護施設、学校、店舗など幅広い用途で使用されています。

また、引き戸でできるかぎり開口を広げたことで、出入りがしやすいようになっています。


リフォーム費用について
今回のリノベーションの総額は、約650万円(税込)でした。
「表層リフォーム+水回りの交換」と比べると高いと思われるかもしれませんが、床を全て張り替え、間取りの半分以上に手を加え変更しているため、これは単なる修繕ではなく、住まいの骨格から暮らしを再構築するフルリノベーションに近い内容です。細切れだった空間を光あふれる広々としたLDKへ変え、将来の暮らしやすさまで見据えた今回の工事は、これからの数十年を快適に過ごすための価値ある投資と言えるでしょう。
新築や築浅マンションであれば、二重床構造になっているので無垢材の使用も問題ありませんが、築古マンションで無垢材を使用することは、遮音性能の問題からそのままでは使えません。今回は既存の床材を全て剥がし、防音マットを下地に設けることで、無垢材の床を実現できました。マンションで突板や挽板ではなく「無垢の床材」を使用したい方はお気軽に相談ください。