- 姫路市の中古マンションを購入したので、床を無垢材にリフォームしたいのですが可能でしょうか?
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はい、中古マンションの床を無垢材にリフォームすることは可能です。ただし、マンションならではの注意点があり、事前に確認しておくべきポイントがいくつかあります。
リフォーム前に確認すべき「マンションの管理規約」
まず最初に、マンションの管理規約を必ず確認しましょう。多くのマンションでは、リフォームに関するルールが定められており、特に床の変更については厳しい規定がある場合があります。中にはフローリングへのリフォーム自体を禁止しているケースもあるため、事前の確認が不可欠です。
マンションで最も重要なのが「遮音等級」です。階下への足音や物音のトラブルを防ぐため、多くの管理規約でフローリング材の遮音性能が「L値(またはLL値)」という指標で定められています。 一般的には「LL-45」や「LL-40」といった基準が設けられており、数字が小さいほど遮音性能が高くなります。大半のマンションでは「L45(LL-45)」で設けられています。無垢材のフローリングは、それ自体に防音性能がないため、この遮音規定をクリアするための対策が必要になります。
古いマンションの中には、建築当初は自主管理から始まり、途中から管理会社が入った管理に切り替わっているケースがあります。そのようなマンションの管理規約には「遮音等級」のことが書かれていなかったりするのですが、その辺は暗黙の了解的に、「L45を満たしてください。」「遮音を意識したリフォームにしてください。」と管理会社からは言われます。
無垢材で遮音性能を確保する方法
管理規約の遮音等級をクリアするためには、以下のような方法が一般的です。
1.遮音性能を備えた無垢材の直張り
「直張り(工法)」とは、フローリング材の裏側にクッション材が一体化した「遮音フローリング」を、コンクリートスラブに直接接着剤で張る、最もシンプルな工法です。1990年代のマンションでは圧倒的に多く採用されていました。
以前は、遮音性能を備えた無垢の床材はありませんでした。なので、無垢材の雰囲気を感じるために、遮音性能を備えた挽板や突板の床材で対応しているケースが多くみられました。
ただ、近年の無垢フローリングの人気の高まりから、WOODONE「無垢ピノアース グランドフローリング L-45」の様に、無垢材の裏面に遮音材を貼り付けた「遮音性能付き」も登場しています。遮音材が付いていれば、コンクリートスラブの上に直貼りができるため、防音マットや二重床の必要がなく、工期や人件費の削減にも繋がります。ただし、遮音材の影響でフワフワ感は発生してしまいます。

【メリット】
- コストが最も安い: 材料費・工事費ともに抑えられ、工期も短く済みます。
【デメリット】
- 床材の選択肢が少ない: 遮音性能付きの無垢材となると限られます。
- フワフワ感が避けられない: 遮音性能を裏面のクッションに頼るため、独特の沈み込むような歩行感があります。
2.二重床工法
コンクリートスラブの上に防振ゴム付きの支持脚を立て、床全体をかさ上げして二重構造にする工法です。配管スペースの確保もできることからメンテナンス性にも優れ、2000年頃からは二重床を採用するマンションも増えてきており、いまや新築マンションでは標準的な仕様になっています。

【メリット】
- フワフワ感がなく、非常に安定している: 戸建てのようなしっかりとした歩行感を得られます。
- メンテナンス性が高い: 床下の空間に配管や配線を通せるため、将来のリフォームにも有利です。
- 床材を自由に選べる: 無垢材はもちろん、様々な床材を使用できます。
【デメリット】
- 床が高くなる: 天井高が低い部屋では圧迫感が出ることがあります。
- コストが高い: 部材が多く、施工に手間がかかるため、費用も工期も最もかかります。
二重床の遮音性能は、軽量衝撃音(スプーンを落とす音など)を軽減する効果がありますが、重量衝撃音(足音、飛び跳ねる音など)は、床下の空間が太鼓の内部のように共鳴し、音を増幅させてしまう「太鼓現象」によって、下の階に響きやすくなることがあります。、また、二重床の支持脚部分が、コンクリートスラブなどの構造体に直接音を伝えてしまうことがあります。特に、施工の精度が低い場合や、防振ゴムが効果的に機能していない場合に騒音が顕著になります。
3.遮音マット(防音マット)の使用
遮音マット(防音マット)とは、コンクリートスラブの上に直接敷き、その上から床材を施工することで、防音効果を発揮するマットです。
遮音マット(防音マット)は各メーカーによってそれぞれ素材や仕様が異なりますが、弊社で採用しているは「サイレント・トライマット」です。

サイレント・トライマットとは、マンションなどの 集合住宅向けに開発された、厚さ22mmで防音性能「LL-45」を達成する一体型防音床下地材です。下地合板と防音材が一体化しており、床に敷き詰めるだけの簡単な施工で、無垢フローリングや合板フローリングなど様々な床材に対応できる点が特徴です。

弊社でマンションリフォームをしたケースでは、施主から「床のフワフワ感を一切無くす」という要望がありましたので、既存の床材は全て剥がし、遮音性能を満たすための防音マット(サイレント・トライマット)を下地に設け、合板を捨て貼りした上で、無垢の床材を張っていきました。


コンクリート上に張り付いている

コンクリートが現れました
コンクリートに直貼りされた床材をめくると、遮音クッションが現れました。これを一枚一枚手作業で剥がしていく地道な作業から、快適な無垢床への第一歩が始まります。
剥がした先には元のコンクリートが現れ、その上から防音マット(サイレント・トライマット)を施工していきます。


これにより、マンションの管理規約で求められる遮音性能(LL45)を満たすことができ、フワフワ感のない床に仕上げることができます。

【メリット】
- フワフワ感がない: 合板下地があるため、しっかりとした歩行感を実現できます。
- 床材を自由に選べる: 無垢材やタイルなど、デザイン性の高い床材も自由に選べます。
- コストのバランスが良い: 二重床より費用を抑えつつ、直床のデメリットを解消できます。
【デメリット】
- 遮音フローリングよりはコストがかかります。
- 床下のメンテナンス性は二重床に劣ります。
マンション床リフォーム工法の比較一覧表
それぞれの特徴を一覧表にまとめました。
比較項目 | ① 遮音フローリング(直床) | ② 二重床工法 | ③ 遮音マット工法 |
---|---|---|---|
コスト(初期費用) | 安い | 高い | 中間 |
フワフワ感 | あり | なし | なし |
無垢材の使用 | 種類が少ない | 可能 | 可能 |
床の高さ | ほぼ変わらない | 大きく上がる (天井が低くなる) | 少し上がる (天井が少し低くなる) |
リフォームの手軽さ | 手軽 | 手間がかかる | 中間 |
床下のメンテナンス性 | 低い | 高い | 低い |
おすすめな人 | コストを最優先したい方 | コストを掛けてでも、メンテナンス性や将来性を重視したい方 | フワフワ感をなくし、無垢材も使いたい方 |
中古マンションで憧れの無垢材フローリングを実現するためには、「遮音規約」をクリアすることが絶対条件です。その上で、ご自身の「これだけは譲れない」という想いに合わせて、最適な工法を選ぶことが成功の鍵となります。
- 遮音フローリング・・・・・手軽さとコストを優先
- 二重床工法・・・・・将来性まで見据えた最高の性能を優先
- 遮音マット工法・・・・・フワフワ感をなくし、好きな無垢材を選べるバランスを優先
予算や要望に合わせて方法を選択していきましょう。