
今回ご紹介するのは、築28年のマンションの床リフォーム事例です。このリフォームは、以下の記事でご紹介した姫路市神子岡前のマンションリノベーションの一部となります。

中古マンションの内覧で多くの人が感じる、あの独特の「フワフワした床」。階下への配慮から生まれた防音性能が、逆に歩行時の不快感につながることがあります。
今回は、そんなマンション特有の床の悩みを根本から解決し、本物の無垢材が持つ確かな質感と心地よさを実現した床リフォームの全貌をご紹介します。
築28年のマンションのリフォーム前の床
Before: マンション特有のフワフワ感と、古びた印象を与える暗い色のフローリング

こちらがリフォーム前の床です。長年の使用による傷や色褪せはもちろん、それ以上に大きな課題が存在していました。
- 床の不快感
階下への音を和らげる防音フローリング(LL-45)が採用されており、その構造上、スポンジの上を歩くようなフワフワした独特の歩行感が常にありました。 - 古びたデザイン
当時の標準的であった濃い木目調のフローリングが、部屋全体を実際よりも暗く、古びた印象に見せていました。 - 施主の理想とのギャップ
「素足で歩いても心地よい、本物の木の床で暮らしたい」という施主の理想とは、質感・デザインともに大きくかけ離れた状態でした。
1990年代以前のマンションでは、二重床などではなく、LL-45(L45)の床材を直張りしているマンションが圧倒的に多いです。直張りは初期コスト抑えられますが、性能を満たすために裏面についてるクッションの影響でフワフワ感が生まれてしまいます。該当マンションの床も元々はこちらの仕様で仕上げらていました。

リフォームのきっかけ:「フワフワ感をなくしたい」無垢材への強い想い
今回のリフォームは、中古マンションをご購入された施主が、ご入居前に理想の住まいを実現させるためのプロジェクトでした。
数ある課題の中でも、施主が最もこだわられたのが「床のフワフワ感をなくすこと」。そして、「マンションでは難しいと諦めかけていた、本物の無垢材の床を実現したい」という強い想いがありました。この熱意に応えるため、既存の床を活かすのではなく、一度すべてを解体し、ゼロから床を再構築する大規模な床リフォームがスタートしました。
リフォーム後の変化:床をゼロから再構築。フワフワさせないための下地工事
コストを抑える「重ね張り」工法ではなく、原因を根本から取り除くため、既存の床をすべて剥がす工法を選択。マンションの防音規定をクリアしながら、無垢材の確かな質感を両立させるための、専門的な工事を行いました。

コンクリート上に張り付いている

コンクリートが現れました
今回のリフォームの核心部です。まず、フワフワ感の原因である防音フローリングを、コンクリートスラブ(躯体)が見えるまで完全に撤去。まっさらな状態から、遮音性能(LL-45)を満たすための専用防音マット(サイレント・トライマット)を隙間なく敷き詰めます。


サイレント・トライマットとは、マンションなどの 集合住宅向けに開発された、厚さ22mmで防音性能「LL-45」を達成する一体型防音床下地材です。下地合板と防音材が一体化しており、床に敷き詰めるだけの簡単な施工で、無垢フローリングや合板フローリングなど様々な床材に対応できる点が特徴です。

この強固な下地の上に、「無垢材メープルのオスモ自然塗装」を一枚一枚丁寧に施工。フワフワ感は完全に消え、一歩踏みしめるごとに無垢材ならではの確かな硬さと、優しい温もりが足裏に伝わります。淡く明るいメープル材が光を柔らかく反射させ、空間全体を上質なものへと一新しました。
塗装は、ひまわり油を主成分としたドイツのオスモ社の自然塗料を使った塗装です。工場で塗装された無垢材を使用しましたのでムラなくキレイに仕上がっており、メープルの高級感を上手く引き出してくれています。


メープルは淡い色調と特徴的な杢目でフローリングだけではなく家具や装飾品などとして幅広く愛用されてきました。特に鳥眼杢があるものは、「バーズアイメープル」と呼ばれ、珍重されています。その他にも玉目「キルテッド」、虎杢「タイガー」、縮杢「フレイム」など特徴的で美しい杢目が光のあたり方で変化して、上質なシルクのように光沢があり高級感があります。その繊細な美しさからピアノやバイオリンなどの精巧な楽器用の材として重用されています。
また、重厚で衝撃に強い特徴を併せ持ち、耐磨耗性の強さからアメリカではプロバスケットボール(NBA)で使用されるコートのフロアやボーリングのレーン、ピンなどにも用いられています。
ユニタイプなので、木目や濃淡がモザイク柄のように細かく見ることができ、広さを感じるお部屋に仕上がります。

これにより、マンションの管理規約で求められる遮音性能(LL45)を満たすことができ、フワフワ感のない床に仕上げることができます。


床リフォーム費用について
今回の床リフォームは、間取り変更などを含む総額約650万円(税込)のリノベーション工事の一部として行われましたので、床だけの工事費で算出するのが難しいです。
既存の床を上から張る「重ね張り」に比べ、今回のような「剥がし工法」によるリフォームは、以下の費用が加わるため高額になりますが、それ以上の価値があります。
- 既存フローリングの解体・撤去費用
- コンクリートに残ったクッション材の除去費用
- 専用の防音下地材と、その施工費用
- 無垢フローリング材と、その施工費用
床の不快感を根本から解消し、本物の無垢材という資産価値の高い素材を使用する今回の工事は、日々の暮らしの満足度を考えれば、非常に価値ある投資と言えるでしょう。
中古マンションの購入は、自分らしい住まいを創り上げるスタートラインです。
「マンションだから、床のフワフワは仕方ない…」
「うちのマンションは規約が厳しくて、無垢材は無理だろう…」
「床のデザインを変えたいけど、どうすればいいか分からない」
もし、そうお考えなら、一度立ち止まってみてください。
今回の事例のように、適切な知識と工法を選べば、マンション特有の制約をクリアしながら、理想の床を手に入れることは可能です。長年の悩みを解消し、本物の無垢材に包まれた暮らしを、あなたも手に入れてみませんか?
