- 中古住宅をリフォームする際、コンセントやスイッチを交換した方がいいですか?
-
はい、特に築10年以上経過している場合は、安全のために交換することを強くおすすめします。
中古住宅のリフォームを計画する際、壁紙の張り替えやキッチンの入れ替えといった目に見える部分に心惹かれます。しかし、毎日何気なく使っているコンセントやスイッチも、経年劣化する重要な電気設備です。見過ごされがちなこれらの交換は、安全な暮らしを守るために欠かせないポイントとなります。
この記事では、中古住宅リフォーム時に考えたいコンセント・スイッチの交換目安から、放置するリスク、費用、そしてリフォーム全体の予算配分における賢い位置づけまでを、一つの記事で網羅的に解説します。
【基本】コンセントやスイッチの交換の目安は「築10年」
コンセントやスイッチの寿命は、使用頻度や環境によって異なりますが、一般的に10年が交換を検討し始める目安とされています。
特に目立った不具合がなくても、設置から10年を経過したものは、内部の部品が劣化している可能性があります。そのため、中古住宅の築年数が10年を超えている場合は、リフォームのタイミングで交換を検討するのがおすすめです。
交換を検討すべき危険なサイン
ご自宅のコンセントやスイッチに、以下のような症状はありませんか?一つでも当てはまれば、それは交換のサインです。放置すると大きな事故につながる危険性があるため、早めに専門業者に相談するなりして、対応しましょう。
- 見た目でわかるサイン
- 変色・焦げ跡・サビ: 内部で過熱やショートが起きている可能性があります。
- ひび割れ・破損: 破損箇所からホコリや湿気が入り込み、漏電や火災の原因になります。
- カバーや本体の緩み: 内部が露出し、感電の危険性があります。
- 使用時にわかるサイン
- プラグの差し込みが緩い・グラつく: 内部の金具が劣化し、接触不良を起こしている証拠です。発熱や火花が散る原因となり大変危険です。
- 触ると熱い: 接続不良や内部の劣化により、異常発熱している可能性があります。
- スイッチの反応が悪い・固い: 照明がつかなかったり、操作に違和感があったりする場合、内部の部品が摩耗しています。
【リスク】「まだ使える」が危ない。古い電気設備を放置する危険性
先程も触れたように、大抵の場合10年以上経っても交換していないケースがほとんどです。なので、築20年以上の中古住宅でも、「まだ使えるから大丈夫」と新築時からのコンセントやスイッチを使用してきているケースが多いです。
ですが、古いコンセントやスイッチを使い続けることには、大きなリスクが伴います。
- 火災のリスク: 劣化したコンセントは、接触不良による発熱や、溜まったホコリが湿気を吸ってショートする「トラッキング現象」を引き起こし、火災の原因となります。
- 漏電・感電のリスク: 内部部品の劣化により絶縁性能が低下し、漏電や感電事故につながる恐れがあります。
- 家電製品の故障: 電力の供給が不安定になり、接続しているテレビやパソコンなどの精密な家電製品が故障する原因になることもあります。
【費用と注意点】交換費用は?DIYは絶対にNG?
コンセントやスイッチの交換にかかる費用は、1ヶ所あたり3,500円~10,000円程度が相場です(部品代・工事費込み)。ただし、これに加えて業者が出張するための出張費が別途かかる場合があります。
そして、最も重要な注意点は「配線を伴う本体交換は、DIYで絶対に行わない」ことです。
例えば、スイッチの場合ですが、分解すると、
- スイッチ本体
- ハンドル
- 取付枠
- プレート
に分かれます。

この中で、電気工事士の資格が不要な作業(DIY可能)なのは、「プレート」と「ハンドル」の部分です。
- プレート
表面の化粧カバーです。多くの場合、マイナスドライバーなどで簡単に取り外せます。これの交換は電気配線に触れないため、資格は不要です。 - ハンドル
スイッチのON/OFF操作で指が触れる部分のカバーです。これもプレートを外した後に、爪で引っかかっていたり、軽くはめ込まれていたりするだけなので、交換に資格は不要です。
電気工事士の資格が必要な作業(要・電気工事士)は、「スイッチ本体」や「取付枠」の部分です。
- スイッチ本体
壁の中の配線が直接接続されている、電気のON/OFFを切り替える本体部分です。これを交換したり、配線を触ったりする作業は電気工事士の資格が必須です。 - 取付枠
スイッチ本体を壁のボックスに固定するための金属製の枠です。
この部品だけを交換する場合、一度壁からスイッチ本体(配線がつながった状態)を取り外し、古い取付枠から外して新しい枠に付け替える作業が発生します。法律上は配線の抜き差しを伴わないため「軽微な作業」と解釈される可能性もゼロではありませんが、配線が繋がった危険な状態で作業することになり、感電やショートのリスクが非常に高いため、絶対にDIYで行うべきではありません。安全のため、取付枠の交換も電気工事業者に依頼してください。
ただし、スイッチの中にはハンドル部分がスイッチ本体と一体化しているものもあります。これも電気工事士の資格者による作業になります。例えば、Panasonicの例で挙げると、「人感などの自動スイッチ」「調光スイッチ」「取ったらリモコン」などの多機能スイッチです。



コンセントもスイッチと似たような内容で、
- コンセント本体
- プレート
に分かれます。

- コンセントプレート
表面の化粧カバーです。これは配線に触れないため、ドライバーなどで取り外して交換する作業は電気工事士の資格は不要です。 - トリプルコンセント (WTF13033WK):
これは壁の内部に収まり、電線が直接接続されているコンセント本体です。この本体を交換したり、配線を触ったりする作業は電気工事士の資格が必須です。
テレビやLANもコンセント類なので、プレートと本体に分かれます。これら弱電(じゃくでん)と呼ばれる配線工事には、原則として電気工事士の資格は不要ですが、壁内での配線作業は専門知識を要するため、リフォーム会社や専門業者に任せるのが一般的です。



つまり、「表面のプレートやハンドルの交換まで」であればコストは抑えられますが、スイッチ本体やコンセント本体の交換になると、配線を伴う工事のため、電気工事士の資格者による作業になり、少々コストが掛かるとも言えます。
【予算配分】リフォーム計画における「コンセントやスイッチの交換」の最適な位置づけとは?
中古住宅を購入して、住む前にリフォームをする場合、多くの方はリフォームの予算が限られています。その中で満足を高めようとするなら、一定のレベル以上のリフォームをできるだけ多くできることが望ましいです。そのためには、限られた予算をどこに振り分けるかはとても重要です。デザイン性の高いキッチンも魅力的ですが、長く住むことを考えると、安全性に関わる部分を見過ごしてはいけません。
リフォームの一般的な優先順位
リフォームの計画を立てる際、多くの人がどこから手をつけるか悩むポイントです。一般的には、生活への影響度や緊急性の高さから、以下のような優先順位で考えられます。
- 最優先:建物の基本性能に関わる部分
内容: 雨漏りの修繕、シロアリ対策、構造躯体の補強、断熱改修など
理由: 建物の寿命に直結し、安心して暮らすための大前提となる工事です。問題が見つかった場合は、他の何よりも優先して予算を確保する必要があります。 - 優先度 高:水回り設備
内容: キッチン、浴室、トイレ、洗面台の交換
理由: 毎日使う設備であり、劣化が進むと水漏れなどのトラブルにつながる可能性があります。新しい設備は家事の効率を上げ、生活の質(QOL)を大きく向上させるため、満足度の高いリフォーム箇所です。 - 優先度 中:内装(表層リフォーム)
内容: 壁紙・クロスの張り替え、床材の変更、建具の交換など
理由: 部屋の印象をガラリと変えることができ、「リフォームした」という実感を得やすい部分です。比較的費用を抑えながら、大きなイメージチェンジが可能です。
コンセント・スイッチ交換は「内装リフォームとセット」で考えた方が良い
では、コンセントやスイッチの交換は、この優先順位の中でどこに位置づけられるのでしょうか。
「安全性」という観点では、その優先度は非常に高いと言えます。古い電気設備は火災や漏電のリスクをはらんでいるため、決して軽視できません。
しかし、交換しても見た目の変化が少ないため、ついつい後回しにされがちなのが実情です。そこでおすすめしたいのが、「内装リフォームとセットで行う」という考え方です。
セットで行うメリット
- 工事が効率的でスムーズ: 壁紙を張り替える際には、既存のコンセントやスイッチのプレートを一度取り外します。このタイミングで本体ごと交換すれば、作業が一度で済み、非常にスムーズです。
- トータルコストを抑えられる: 電気工事だけを単独で依頼すると、部品代や工事費の他に「出張費」がかかります。内装工事と同時に行えば、職人さんの出入りをまとめることができ、諸経費を節約できる可能性があります。
- デザインの統一感が生まれる: 最新のスイッチやコンセントは、デザインも豊富です。新しい壁紙に合わせてスタイリッシュなものを選べば、部屋全体のインテリア性が格段にアップします。
つまり、リフォームの予算を計画する際は、まず建物の基本性能やインフラ(電気設備を含む)の安全性を確保する予算を最優先し、その上で水回りや内装の計画を立てていくのが賢明です。
中古住宅のリフォームは、新しい暮らしへの期待に満ちた一大イベントです。しかし、その成功は、デザインや設備の華やかさだけで決まるものではありません。毎日を本当に安心して過ごすためには、今回クローズアップしたコンセントやスイッチのような、「安全を支える基盤」への目配りが不可欠です。
築年数が経過した住宅では、電気設備が知らず知らずのうちにリスクを抱えているケースが少なくありません。リフォームの予算を検討する際は、ぜひ「安全への投資」という視点を計画の中心に据えてみてください。
そして、その最も賢い実践方法が「内装リフォームとの同時施工」です。壁紙が新しくなるタイミングで電気設備も一新すれば、無駄なコストや手間を省けるだけでなく、インテリアとしての完成度も高まります。
見た目の美しさと、見えない部分の安心感。その両方を手に入れることで、心から満足できるリフォームを実現させましょう。
