- 自宅を高く売るためには事前にリフォームした方がいいですか?
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いいえ。原則、リフォームは不要です。費用を売値に上乗せできず、赤字になる確率が高いためです。数百万円の工事より、数万円の「ハウスクリーニング」と「不用品撤去」が最も手元にお金を残せる方法です。
「壁紙も古いし、キッチンも汚れているから、リフォームしてから売り出した方が高く売れる」
その方が見栄えも良くなるので、普通のリフォーム会社なら推奨すると思います。ですが、売り出す前のそのリフォームは、コスパの悪いことになるかもしれません。
「リフォーム費用」は売値に上乗せしにくい
「水回りと壁紙や床などリフォームで、400万円のリフォームをしたから、400万円上乗せできる!」これは多くの売主が誤解しやすい最大のポイントです。
例えば、相場が2,000万円のエリアにある中古住宅があるとします。「400万円かけてキレイにリフォームしたんだから、単純計算で2,400万円。いや、新築そっくりになったから、少し色をつけて2,500万円〜2,600万円で売れるはず…」
しかし、不動産市場において、リフォーム費用がそのまま査定額にプラスされることは、ほぼありません。
これには、近隣の「新築分譲価格」との兼ね合いが深く関係しています。姫路市内にも新築分譲を展開されている会社はいらっしゃいます。
もし、そのエリアの新築建売住宅が2,900万円前後で販売されていたとしましょう。そこにリフォーム済みの中古物件を2,600万円で売り出した場合、新築との差額はたったの300万円しかありません。
ここで買い手は冷静に電卓を叩きます。
「300万円の差なら、月々のローン返済に直すと月々7,000円〜8,000円程度の違いか…」
「それなら、最新の耐震や断熱性能と10年保証がついて、税制優遇も手厚い『新築』の方が安心じゃないか?」
つまり、リフォーム費用を上乗せして価格がつり上がると、中古住宅最大のメリットである「割安感」が消滅してしまうのです。
その結果、中古物件としても高いし、新築と比べても魅力が薄い…という「誰からも選ばれない価格帯」に陥ってしまいます。結局、売れない期間が続き、2,100万円〜2,200万円(相場+α程度)まで値下げしてやっと成約…。
つまり、かけた400万円のうち、200万〜300万円は売主側の「持ち出し(赤字)」になってしまう確率が極めて高いのです。
今の買い手は「自分でリフォームしたい」
「次の人のためにリフォームしておきたい。」そのお気持ちは大変素晴らしいです。しかし、姫路も含め今の中古住宅市場、特に若い世代の買い手心理は少し違います。
今のトレンドは「中古を買って、自分好みにリフォームやリノベーションする」ことです。
- 「壁紙はグレーで統一したい。でもトイレは水色を使用したい。」
- 「キッチンは人造大理石の天板で、吊戸棚の部分の壁は壊してオープンにしたい」
- 「和室を洋室化したい」
- 「柔らかいクッションフロアではなく、硬いフロアタイルを使用したい」
今の買主側は、自分たちの夢を描いて物件を探しています。中古住宅であってもできるかぎり、自分たちの好みを反映させたいと思っています。実際、弊社で施工したリフォームやリノベーションも皆、施主のこだわりや好みが反映されています。
そこに、売主様の善意で行った「無難な量産型リフォーム」があったらどう思うでしょうか?
「新品だから交換するのはもったいない。でも、自分たちの好みじゃない…」というジレンマを与え、せっかくのリフォームも「自分の好みを邪魔するもの」になってしまい、購入意欲を削いでしまいやすくなります。良かれと思って数百万円かけて内装をリフォームしても、買い手の方が「自分好みの壁紙に張り替えたい」「キッチンはもっと別のメーカーがいい」と思ってしまえば、そのリフォーム費用は無駄になってしまいます。
また、金銭面でも買主には『自分でリフォーム』の方がメリットがあります。今の住宅ローンは『物件購入費+リフォーム代』をまとめて低金利で借りられます。
しかし、売主側でリフォームをして物件価格が上がってしまうと、買主は『自分の好きな工事に使える予算』が削られてしまうことになります。これでは、あえて中古を選ぶメリットが半減してしまうのです。
なので、売却前のリフォームは、「コストをかけて、ターゲット層(自分の好みを反映させたい層)を切り捨てる」という、非常にリスクの高いギャンブルになってしまうということなのです。
見た目の清潔感が9割!「ハウスクリーニング」がコスパ最強の理由
では、ボロボロのままでいいのか?というと、それも違います。ここで登場するのが、「ハウスクリーニング」です。
理由はシンプルです。リフォームは「好み」が分かれますが、清潔感は「全員」が好きだからです。「ピカピカに掃除されている状態」を嫌う人はいません。ハウスクリーニングは、最もリスクが低く、確実に好感度を上げる投資なのです。
「汚い」は値引き理由になってしまう
買い手は、築年数が古ければ「設備が古いこと(経年劣化)」は納得して見に来ています。しかし、「生理的な汚れ(不潔感)」だけは、本能的に拒絶します。
買主側として見学にいった中古住宅が、
- 油まみれでベタベタな部屋だったらどうでしょう?
- 虫の死骸が転がっていたりしたらどうでしょう?
- ベランダが鳩の糞まみれだったらどうでしょう?
…嫌ですよね?
例えば、買い手が内覧時に「汚いお風呂」を見た時、どう感じると思うでしょうか?単に「汚いな」と思うだけではありません。
- 「こんなに汚いなら、見えない部分も傷んでいるに違いない」
- 「水回りを全部交換しないと住めないから、その分200万円値引きしてもらおう」
このように、「汚れ」は、実費以上の「過度な値引き交渉の材料(口実)」に使われてしまうのです。
プロのクリーニングでピカピカにしておけば、「古さは感じるけど、清潔に使われていたんだな。」というポジティブな感想に変わります。
数万円のクリーニング代は、「数十万円~数百万円の不当な値引き」をブロックするための「コスパの良い投資」なのです。
ネット社会では「写真」が命
現在、姫路で家を探している方のほとんどが、まずはスマホで物件情報を検索します。そして、ポータルサイトなど、物件情報や写真が掲載されたページを閲覧します。
その時、汚い部屋とキレイな部屋、どちらをクリックするでしょうか?答えは明白ですよね。仲介をする不動産会社も、明るさを調整したりと、できる限りキレイに写るよう工夫して撮影しますが、被写体が汚れていたりモノが溢れていたりすると限界があります。それはプロのカメラマンでも同じです。
クリーニングを入れて写真をきれいに撮ることは、「内覧の数」を増やすための最強の集客対策でもあります。
加えて、「不用品の撤去」も効果大
ハウスクリーニングが「金銭的なコスパ最強」なら、「手間のコスパ最強」なのが、「不用品の撤去(モノを減らすこと)」です。
これは、現在居住中の売主だけでなく、相続した実家などの「空き家」を売却される方にも共通する、極めて重要な戦略です。
「引き渡し前に撤去します」が損をしている理由
内覧の際、よくこのような説明をする売主様がいらっしゃいます。
- 居住中の方:「引き渡し前までにこの荷物は全部捨てていきますから」
- 空き家の方:「まだ荷物が残っていますが、契約が決まったら売主負担で撤去しますので安心してください」
お気持ちはよく分かります。処分にも費用がかかるため、「売れることが確定してからお金を使いたい」というのが本音でしょう。しかし、それでは損をしています。
買い手は「都合よくイメージすること」ができない…
買い手の多くは、モノで溢れている部屋を見て、「ここから荷物がなくなったら、これくらい広くなるだろう」と、脳内で都合よくイメージ(引き算)することができません。
特に「空き家」に残された古い家具(大きなタンス、鏡台、重厚なソファなど)は、部屋を物理的に狭くするだけでなく、「昭和の生活感」「古臭さ」「重苦しい雰囲気」を強烈に醸し出します。
買い手は、目の前の残置物が視界に入ると、理屈では「撤去してくれる」と分かっていても、無意識にこう感じてしまいます。
- 「なんだか暗くて狭い家だな…」
- 「この圧迫感…自分たちの家具が入るイメージが湧かない」
つまり、残置物がある状態を見せることは、自ら「家を狭く、古く見せる演出」をしてしまっているのと同じなのです。
だからこそ、「見せる前(写真を撮る前)」に捨てた方が良いのです。
- 居住中なら「床を見せる」
床面積が見えれば見えるほど、部屋は広く、価値が高く見えます。生活上のノイズを徹底的に減らしてください。 - 空き家なら「空っぽにする」
何もない空間は、光が回り込み、部屋が驚くほど明るく広く見えます。買い手は「ここに自分のソファを置こう」と、新生活のポジティブなイメージを描きやすくなります。
- 「ハウスクリーニング+残置物の撤去」
極力、お金をかけずに「広さと明るさ」「清潔感」をアピールする。この組み合わせこそが、中古住宅売却における「再現性の高い必勝パターン」となります。
もし費用が心配なら、まずは見積もりだけでも取ってみてください。意外と数万円〜十数万円で収まることも多いですし、その出費で数百万円の値引きを防げるなら、安い投資だと思いませんか?
注意点:ハウスクリーニングや残置物撤去が不要なケース
唯一、ハウスクリーニングや残置物撤去が無駄金になる(コスパが悪い)ケースがあります。
それは、「建物が古すぎて、解体(更地渡し)やフルリノベーション前提で売る場合」です。
この場合、買い手は建物の状態を気にしていない(どうせ壊す)ため、掃除をしても価格に反映されません。不動産会社に「この物件は建物としての価値をアピールすべきか、土地として売るべきか」を確認してから依頼するのが賢明です。
